EXHIBITION 展覧会紹介|刀剣編

ボストン美術館の名刀

海外にも日本刀を収集する美術館は数多くありますが、ボストン美術館は約600口の日本刀を収蔵しており、その収蔵品数と作品の質は群を抜いています。本展では、そのコレクションから厳選した20口をご紹介します。

コレクションの中で最も古い作は、平安時代中期の伯耆国安綱で、本展覧会に出品される「太刀 銘 安綱」(武者絵編:平安の武者)は、安綱の作としては最も長い太刀として知られています。

江戸時代以前、日本刀は京都、奈良、岡山、神奈川、岐阜が主要な製作地で、多くの流派、名工が輩出しました。「脇指 銘 来国宗」は、京都の来派の中で遺存が少ない南北朝期の国宗の貴重な作です。「太刀 銘 三条𠮷則作」は、同じく京都で室町時代に活躍した三条𠮷則の作ですが、刀身全体に刃文の入った皆焼ひたつらが華やかでとても珍しい作品です。併せて出品される刀装具は、幕末明治の名金工・加納夏雄作の牡丹の金具が美しい名品です。「短刀 銘 大和尻懸則長四十八作之 文保三年己未三月十日」は、奈良(大和)の刀工・則長の作で、文保3年の年号と「四十八作之」の銘が記されています。刀工の制作年齢を記した事例は少なく、刀工史上からも貴重な作品です。日本刀の最大の生産地であったのが岡山(備前)で、平安以降、古備前、そして一文字、長船などの流派が継続して活躍します。「太刀 銘 重久」は初期の福岡一文字派の刀工・重久の作、「太刀 銘 一備州長船住助重作 康永貮年十一月十二日」は吉岡一文字派の作と考えられますが、長船住としている唯一の事例です。そのほか長船派の始祖光忠の「刀 金象嵌銘 光忠」、そのひ孫にあたる兼光、同時代の長義など長船の著名刀工の作品が揃って出品されます。

江戸時代初期の慶長以降の刀は新刀と呼ばれていますが、その新刀の祖と呼ばれているのが堀川国広です。出品作の「刀 銘 洛陽住信濃守国広 慶長十五年八月日」は、その最晩年の作です。江戸では切れ味が最も優れた長曽祢興里の門下で2代目・興正の優作「刀 銘 長曽祢興正」、理論家で多くの刀剣に関する著作を残した幕末の刀工・水心子正秀の初期作「刀 銘 水心子正秀 寛政三年八月日」も出品されます。

ボストン美術館の名品で、平安時代から江戸時代末期までの日本刀の歴史を概観することができる展示構成となっています。

「短刀 銘 備前国福岡左兵衛尉長則 正安二年八月日」  正安二年(1300) William Sturgis Bigelow Collection

「太刀 銘 備州長船住兼光」  鎌倉時代(14世紀) Charles Goddard Weld Collection

「金梨子地家紋散糸巻太刀拵」  江戸時代(17世紀) Charles Goddard Weld Collection

「刀 金象嵌銘 光忠」  鎌倉時代(13世紀) William Sturgis Bigelow Collection

「太刀 銘 三条𠮷則作」  室町時代(15世紀) William Sturgis Bigelow Collection

加納夏雄 「蠟色塗鞘打刀拵 牡丹図鐔 牡丹図揃金具」  江戸時代~明治時代(19世紀) William Sturgis Bigelow Collection

「刀 銘 洛陽住信濃守国広 慶長十五年八月日」  慶長15年(1610) Gift of the W. A. Compton Oriental Arts Foundation

「刀 銘 水心子正秀 寛政三年八月日」  寛政三年(1791) William Sturgis Bigelow Collection

本展では、武者絵と関連する刀剣を、
国内のコレクションからも
特別出品いただきます。

※特別出品作は各会場で異なります。

土蜘蛛退治の物語(武者絵編:平安の武者)に関連した名刀

「刀 折返銘 長円(薄緑)」  平安時代(12世紀) 個人蔵

*東京会場、兵庫会場のみ出品

長い太刀を磨上げた際、銘が失われないように銘の部分を折り曲げて残している。長円は豊前国、あるいは豊後国の刀工。古来源氏の重宝薄緑の太刀であると伝えられている。『平家物語』の「剣の巻」によれば、為義が熊野権現に奉納した吼丸(膝丸)を、義経が熊野別当から与えられたとき、夏山は緑も深く、春は薄かろうとして、春山を分け出でたれば薄緑と名付けたという。

歌川国芳 「源頼光の四天王土蜘退治之図」  天保10〜11年(1839–40)頃 William Sturgis Bigelow Collection

平安の武者たちが愛した格調高い名刀

国宝「太刀 銘 正恒」  平安時代(11世紀) ふくやま美術館(小松安弘コレクション)

*静岡会場のみ出品

古備前を代表する名工正恒の太刀。生ぶ茎で地刃ともに健全に保存されており、小鋒で腰反りが高く、踏張りがついた姿が美しい。小板目がよく整い淡く映りが立った鍛え肌に、直刃調に小乱、小互の目、小丁子を交えて小沸が深くついた刃文を焼く。同作中の傑作で最も古調で優れた出来栄えを示す。江戸時代には阿波徳島藩主蜂須賀家に伝来した。

上杉謙信の愛刀といわれる名刀

「太刀 銘 長船 長光 文永十一年十月廿五日」  鎌倉時代 文永11年(1274) 米沢市上杉博物館蔵

*静岡会場、兵庫会場のみ出品

高瀬長光の号があり、上杉景勝が秘蔵した三十五腰の内の1口である。長光は、備前長船派の祖光忠の子と伝え、年号を記した作では、本作の文永11年(1274)が最も古く、嘉元2年(1304)まで残る。文永11年10月25日は、元寇の乱で蒙古軍が博多から敗走した日で、それを記念して銘を入れたとの見解があり、年号も長光自身の銘か、他者の銘との説も存在する。丁子に互の目を交えた刃文で、長光の初期の典型的な作風を示している。

歌川国芳 「信州川中島大合戦之図」  弘化2年(1845)頃 William Sturgis Bigelow Collection

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